『ガール』—感想・レビュー

個人的評価 41/100 (脚本2点+演出80点)÷2
最低の脚本と最高の演出

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由紀子(香里奈)・聖子(麻生久美子)・容子(吉瀬美智子)・孝子(板谷由夏)の4人は、
仕事も境遇も違うけれども気の合う友達同士。
それぞれ、女として生きることに悩みを抱えていた。
大手広告代理店に勤める由紀子は、30歳を目前にして焦りを募らせていた
。若い恰好が年相応ではないと指摘されたこと、
大学時代の友人・蒼太(向井理)とのトキメキのない恋愛
、念願の女子イベント企画をめぐってのクライアントとの対立が相次ぎ
、いつまでも“ガール”ではいられないのか……と、自分を見失う。
大手不動産会社に勤める34歳の聖子は管理職に抜擢されたものの、
新しく部下になった今井(要潤)は自分より年上の男性で、
事あるごとに露わになる今井の男性優位の考え方についに怒りを爆発させてしまう。
一方家庭では、夫の博樹(上地雄輔)よりも稼ぎもキャリアも上で、
子どもがほしいという本音を言えずにいた。
老舗文具メーカーに勤める34歳の容子は、
恋にも無縁のずぼらな生活を送っていたが、
ある日、ひと回り年の違う新入社員・慎太郎(林遣都)の教育係を任される。
あっという間に女子たちから人気を集める慎太郎に容子もまた惹かれていくが、
自分の気持ちを抑え込もうとする。
そんな中、実家に帰ると妹の結婚が決まっており、両親には気を遣われる始末。
素直になれず、悶々とする日々。
孝子(板谷由夏)は離婚を経て、6歳の息子を抱えながら3年ぶりに営業職に復帰した。
仕事でシングルマザーを言い訳にしないよう頑張り、
息子のために父親代わりに鉄棒やキャッチボールを教えられるよう練習にも励み、
シッターの帰る時間に間に合うよう急いで帰宅するという息つく暇もない毎日。
しかし職場では妙に気を遣われ、息子は母の姿に違和感を抱いていた。
孝子は仕事も家庭も大事にしたいのに空回りしていることに、虚しさを覚える。
もう“ガール”ではないのかもしれない。それでも彼女たちは懸命に女として人生と向き合う。

※今回はかなりネタバレしてますので一応気をつけてください。 
■フェミニズムの皮を被った最低な女性蔑視映画
本作の脚本は暴力的なまでに悪質です。
人生の岐路に差し掛かる微妙な年齢の女性たちが
「今の私じゃ駄目だ。変わらなきゃ」
と頑張って人生の喜びと悲哀を学ぶ話
かと途中まで思わせておいて
最終的には
「あなたたちはそのままでいんですよ」
という耳障りのいい言葉で女性を甘やかす
という最低の話
です。

由紀子(香里奈)は結局変わる事・
大人になる事を拒否します。

聖子(麻生久美子)の場合は周りが最低なアホばかり。
この人は転職を考えるべき。
あれだけあからさまな嫌がらせをしていて
気づかない同僚と、男を立てろの一言ですます上司
というボンクラだらけの職場なのに
設定は超大手のデベロッパーという現実感のなさ。
ええい!お前ら全員クビだ!クビ!!

容子(吉瀬美智子)は何にもしないで
自戒してたら年下イケメン君が勝手にアプローチしてきました
よかったよかった
ってそんな訳あるか!
頼む!もう少し自分を持ってくれ!


孝子(板谷由夏)は結局なにも変わらず。
なぜそこまで自分を追い込もうとする?
頼ってくれと申し出る周囲を無視して頑張り続けるその姿に
「・・・この人が大変なのは環境のせいじゃなくて
空気が読めないその性格のせいなんじゃないか?」
と。

本作はこんな感じで散々すったもんだ
あった挙句
「自分らしく」「そのままの君が素敵」
というふざけた結論を出しやがります。

ここで私は問いかけたいのですが
世の女性たちはこんな風に甘やかされれば満足なんですか?

「君は頑張ってるよ」「君はこのままでいいんだよ」
という口当たりの良い言葉を聞けば安心するんですか?

女性を馬鹿にしているとしか思えない!

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■驚異的な演出力
というわけで本当にどうしようもない話です。
どうしようも無い話なのに41点という高めな点数をつけたのは
演出が素晴らしいかったからです。

演出マジックの麻酔が効きすぎて
2時間強の上映時間が苦痛ではありません。

これはすごいことです。

本作における深川監督の貢献度、底上げの力は
半端ではありません。

深川監督のすばらしいところは
1に画面構成
2に音声
3に演技の統一感

です。

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1.画面構成
深川監督はクロースアップ・ロングショット・ミドルショット
のバランスが絶妙です。
さて、映像製作をしてみたことのある方は
判ると思いますが
ミドルショットは説明カットとしては必要不可欠ですが
使い方が意外と難しいです。
なぜかというとミドルショットの配分が多いと
画面が安っぽくなるからです。
逆にクロースアップとロングショットは映画的です。

これは理屈ではなくそういうものだと思ってください。

だからといってクロースアップとロングショット
ばかり使うと画面内で何が起きてるのか
さっぱりわかりません。

本作はクロースアップが非常に多いのですが
そこに絶妙な感覚とフレーム数でミドルショットが混ざってきます。

またカメラワークも極めてテクニカルで
すばやく複雑なドリーショットとハンディ、フィックスを
徹底的に浅い被写界深度のレンズワークで
1点集中の視点誘導をしてきます。

こんなに安っぽい話なのに
1カットたりとも安っぽいカットがないのは
すごい事です。

2.音声
深川監督は東京ビジュアルアーツで
音声を学ぶところから入ったそうです。

そのためが環境音の使い方が絶妙です。
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でもそうでしたが
カットを映像ではなく音からつないでいます。

これまた映像製作をしたことのある方は
判ると思いますが
映像をつなぐ上では映像以上に音声のつながりが
重要になってきます。

画面はコンテどおりの素材をつなげば
つながりますが
音声は音量レベルや距離感、ノイズの問題で
取った音そのままでつながるというわけにはいきません。

それだけ音は大事ですし、素人が最初につまずくのも音です。

深川監督はその上で音を使ってリズムを作っています。
ブラックバーストからの音声ズリ上げ
ミドルショット⇒手元⇒ミドルショット⇒足元
の細かいカットつなぎも粒のそろった録音あってのものです。

また編集も技術面でがっちりと本作のテクニカルな部分をサポートしています。

3.演技の統一感
本作では演技的にはみ出している役者さんがいません。
お世辞にも上手い印象のない
上地雄輔さんでさえまともに見えます。
これもすごい事です。

キャストの演技の方向を統一させるのは
大事なことだけど極めて難しいことでもあります。

役者さんでも、
上手いけどオーバーアクトな人
下手でオーバーアクトな人
上手くて抑制の効いた人
下手だけど余計なことはしない人
ただ下手な人
と演技レベルはバラバラです。

監督の役割はレベルがバラバラで我の強い
俳優という人種を無理やりにでも
同じ方向に向けさせることにあります。

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では船越英一郎さんを抑えるのに苦心惨憺した
姿が画面から透けて見えましたが
本作でははみ出している人はいませんでした。

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■まとめ
最初にも書きましたが本作の脚本は最低です。
最低なんですが演出力が高度すぎるため
観られてしまうという極めて珍しい例です。

日本で映像製作を志す方にとっては必見な作品だと思います。

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2012/ 06/ 20( 水) 10: 49: 04| まとめwoネタ速neo
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