高品質な邦画『少年H』—感想・レビュー

■個人的評価 78/100点
脚色のツボが素晴らしい!
少年H1

■あらすじ
昭和初期の神戸。名前のイニシャルから「H(エッチ)」と呼ばれる少年・肇は、
好奇心と正義感が強く、厳しい軍事統制下で誰もが口をつぐむ中でも、
おかしなことには疑問を呈していく。
Hはリベラルな父と博愛精神に溢れる母に見守られ成長し、
やがて戦争が終わり15歳になると独り立ちを決意する。 
今日は終戦の日です。
公開中の邦画で最も今日という日にふさわしい作品でしょう。

封切り初日に行きましたが客入りは8割くらい。
宣伝費も相当かかっているはずですが大丈夫なのでしょうか。

■原作について
原作は1997年に刊行された妹尾河童氏の
半自伝的小説です。
半自伝的小説の皮をかぶっているので分かりづらいですが
原作は「僕の敵はアメリカでもイギリスでもない!特高警察と憲兵隊や!」
というHのセリフがあったり共産党万歳したりとかなり真っ赤っかな
内容で左翼から見た戦争体験談と思ってみると中々面白いです。

映画版ではその辺りの主張は抑え目になっていて
あくまでも少年のイノセントの視点から
おかしい物に対しておかしいとはっきり主張する反戦映画の趣が強くなっています。
レビューを読むと「リアルな反戦物」とか書いている方が結構いらっしゃるようですが
戦時下の全体主義的な日本で本作の妹尾一家のような考え方、生き方を
するのは極めて困難だったのではないでしょうか?

情報統制を受けていた当時の状況で周りに流されず信念を貫く生き方は
ほぼファンタジーみたいなものだと思います。
もっとも反戦という結果ありきで作られている作品なので
そのあたりに突っ込むのも野暮というものでしょうか。

ちなみに原作小説は発表当時時代考証のおかしさをかなり
つっこまれてました。
下記参照
間違いだらけの少年H
間違いだらけの少年H―銃後生活史の研究と手引き間違いだらけの少年H―銃後生活史の研究と手引き
(1999/05)
山中 恒、山中 典子 他

商品詳細を見る


少年H2

■脚色について
まず膨大なセンテンスを含んだの長編をこれだけの時間に圧縮した
脚色には驚きました。

そのために一部のキャラクターが削られていたりしましたが
基本的に流れはすっきりしており、尺足らずどころか
エピローグの部分が若干余計に感じられたほどです。
ここ3年くらいでやけに尺の長い邦画が増えた気がしますが
他の作品にもこれぐらいまとめる力があればむやみに尺を増やす事もないのではないでしょうか。

名人・古沢良太先生の技を感じました。
ただし終戦後のエピローグの部分で削りすぎたせいか
薫と盛夫の感情の流れが分かりづらく
ここは半端な描写をするくらいならいっそのこと削るなり
もう10分くらい逆に尺を伸ばすなりして欲しかったところです。
どっちかにしてもらえればエピローグを余計に感じることも
なかったかもしれません。

とかなんとかケチばかりつけている気がしますが
トータルで見たら今年の邦画の中では間違いなくトップクラスの
作品です。
邦画の規模としてはかなりのブロックバスターですが
降旗康男監督の安定感は素晴らしいですね。
前作の「あなたへ」は正直微妙でしたが
1800円払って観て損はない作品だと思います。
お子さんの情操教育にもお勧めです。

少年H3

関連エントリー
終戦の日企画② 映画に見る太平洋戦争 ~学童疎開、特攻隊、市井の人々、日本の敗戦編~

コメント

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2013/ 08/ 27( 火) 23: 49: 06| | # [ 編集 ]
 

コメントの投稿

  • URL
  • コメント内容
  • password
  • 秘密
  • 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL: http://undersiege.blog112.fc2.com/tb.php/164-ab66543b
ブログパーツ