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『ばしゃ馬さんとビッグマウス』—感想・レビュー

■個人的評価 92/100
ほとんど完璧。
ばしゃ馬1

■あらすじ
脚本家を目指す34歳の馬淵みち代(麻生久美子)は、
学生時代からコンクールに作品を応募し続けているが落選ばかり。
「私、こんなに頑張っているのに」が口癖で、
周囲からは「ばしゃ馬さん」と呼ばれている。
同じく脚本家志望の28歳・天童義美(安田章大)は、「俺が本気を出したらスゴイで」
と言いながらも一度も作品を書いたことがなく、他人の作品を酷評してばかり。
そんな「ビッグマウス」の天童が、
年上で性格も真逆な馬淵に恋してしまったことから起こる騒動を描く。 
「さんかく」で映画ファンから絶大な支持を得た吉田恵輔監督の最新作。
地味で一般受けしそうにない作品ですが私が観た回は結構埋まってました。
こういう秀作にお客さんが入っているのは嬉しいですね。

■難点
最初に書いたようにほとんど完璧な出来だったので最初に難点だけ書いておきます。
まず、シナリオスクールに麻生久美子さんみたいな美人はいません(笑)
こんなところに突っ込むのも野暮というものですがやはり気にはなるので。

もう一点は長過ぎることです。
日本は昔からこういった私小説的なものが1ジャンルとして受け入れられていますが
このジャンルで2時間あるのは正直ちょっときつかったです。
ですが逆にこれだけの尺を使って主役2人のディテールを掘り下げたからこそ
ここまでのクオリティに仕上がったとも言えるので単純に難点とも言い難いところです。

■シナリオスクールリアリティあり過ぎ
本作はシナリオ作家協会が取材協力にあたっています。
実は私は以前この協会が主催しているシナリオ講座に通っていたことがあります。
同時期に映像の専門学校に通っていてどちらかというとそちらがメインだったのですが
夜間帯だったので、全部ではないですが真面目に出てはいました。

その経験から言いますが本作での描写は滅茶苦茶リアルです。

全員で声に出して本読みしてるところがありますが
唯一そこだけがリアルじゃありません。
時間が限られてるので全員投稿作品は事前に読んでくる決まりになっていましたので。
吉田監督はそんなことわかってるでしょうから
あえて分かりやすくしたんだと思いますが。

馬淵や天童のような人も実際にいます。
天童ほど極端ではないのですが辛めの批評をしてくる人に限って
自分では書いてこないというのもまた事実です。

ばしゃ馬2

■凡人と天才の超えられない壁
こういう事を書くと身バレしそうなのですが
私は今まで映像の専門学校とシナリオ講座で脚本家・映像作家を目指す方々に
何十人も会ってきました。

その中に一人だけ「この人には何をどうやっても勝てない」と思った人がいます。
彼は渡部亮平くんといい自主制作映画の『かしこい狗は、吠えずに笑う』
という作品で昨年国内のインディー系映画祭を席巻しました。
全国で小規模ながら劇場公開もされているのでご存知の方もいるかもしれませんが
私は彼が初めて作った短編映像を見させてもらった時に「これを天才というのか」
と思ったものです。

本作で馬淵の「才能がないってことくらいとっくに分かっている」
という台詞がありますが、身にしみるほどよくわかります。

この世界では残酷なほど持てる者と持たざる者が区別されるのです。

私の同期生も大半がすでにプロになる目標を諦めています。
APやADとして現場に立っている人もいますが
彼らは職務が忙し過ぎて自分の作品を全く作れていません。
在学中にきっぱり諦めた人もいます。

私とて小さなコンペの入選経験がなかったらとっくに諦めているところです。

それ故に彼女が劇中に発する台詞の一つ一つがグサグサ突き刺さってきました。

■演出について
吉田恵輔監督は山下敦弘監督(『リンダ リンダ リンダ』『天然コケッコー』など)
と同世代にあたり同じようにインディーの出身です。

この世代のインディー出身の監督さんはフィックスの長回しを多用します。
インディーズで活動したのは2000年前後になると思いますが
この頃丁度VX2000というDVカムが出た頃で
デジタル化の波が押し寄せ、またVX2000がシネライク機能を持っていたことで
画面のクオリティが大幅に向上しました。

その描画力をつかってどん引きの画面で
フィックスで延々と回して役者から芝居を引き出そう
というのがはやりだった訳です。
(それをまねして大半の自主映画が目も当てられない出来になったというのもまた事実ですが)

本作でもミドルショットぐらいの画面で
延々と長回しで芝居するカットが散見されます。

吉田監督は役者の芝居を引き出し存分にその効果を発揮した者と思います。
このやり方は役者さんに演出まで丸投げにしてしまうので
中途半端にやると大怪我しかねないですが素晴らしかったです。

また構成の面でも、深刻になりすぎないように
シーン尻でギャグにして外してくるバランス感覚も素晴らしかったです。

ばしゃ馬3

■まとめ
今年は『横道世之介』があって『そして父になる』があって
もうこれ以上の作品は出てこないと思っていましたが出てきました。

本当に素晴らしい作品です。

そして今回の記事がなんか自分語りみたいになってしまったことを
反省しつつ終わりにします。

関連エントリー
2010年 日本映画ベスト10

コメント

マイブログに、トラバ&リンク&引用、させてもらいましたー
不都合あれば、コメントくださいませ!
どうぞ宜しくお願い致します~
2013/ 11/ 30( 土) 02: 11: 24| URL| ジョニーA# E9eLvxbA[ 編集 ]
 
すごく面白いレビューでした!
吉田監督の映画の雰囲気、良いですよね。
私も映画ブログをやっていて、この映画はすごく気に入ってレビューを書いているので、同じように絶賛している方を発見して嬉しいです。
2014/ 05/ 22( 木) 23: 46: 39| URL| なお# -[ 編集 ]
 
ありがとうございます。
こういう作家性の強い監督がメジャー系映画に関わるのは
良い傾向だと思っています。
> すごく面白いレビューでした!
> 吉田監督の映画の雰囲気、良いですよね。
> 私も映画ブログをやっていて、この映画はすごく気に入ってレビューを書いているので、同じように絶賛している方を発見して嬉しいです。
2014/ 05/ 28( 水) 00: 18: 14| URL| ランボー怒りのサービス残業# -[ 編集 ]
 
「さんかく」や「銀の匙」も面白かったです。

リンクフリーとあったので、私のブログにリンク貼らせていただきました。
また記事を読みに来ますね。


「ばしゃ馬さん~」はDVDが出たので、ブログでもう少し詳しい分析をしてみたいと思っています。良ければまた今度見に来て下さい。
2014/ 05/ 28( 水) 20: 52: 55| URL| なお# -[ 編集 ]
 

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eiga.com 作品情報 『ばしゃ馬とビッグマウス』 ■解説:「純喫茶磯辺」「さんかく」などオリジナル作品を意欲的に発表している吉田恵輔監督が、夢を捨てきれない男女の葛藤や挫折、恋模様をユーモラスに描いたヒューマンコメディ。脚本家を目指す34歳の馬淵みち代は、学生時代からコンクールに作品を応募し続けているが落選ばかり。「私、こんなに頑張っているのに」が口癖で、周囲からは「ばしゃ馬さん」...
2013/ 11/ 30( 土) 02: 09: 44| ジョニー暴れん坊デップの部屋
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