映像で一番大事なのは本当に演技と脚本なのか?

私がブログを開設してから4年経ちました。
それまであまりネット上の映画レビューというのは
見てこなかったのですがブログ開設がきっかけで
よく見るようになりました。

ネット上のレビューの良いところは変なバイアスが
かかっていないためお金を払ってみた方たちの素直な意見が聞けるところと
マスメディアからの発信と違って
情報を取捨選択できるのというところにあります。

ここからリンク張っている
レビューブログは私もちょいちょいみて
参考にしています。


映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術
(2009/03/31)
シド・フィールド

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さて、以前から何度か書いていますが私は映像の専門学校と
シナリオのスクールに通っていました。
今まで何本か自主製作映画を撮ってきて
近年はインディー系の映画祭でポロポロと賞に
ひっかかるくらいのものは作れるようになってきました。

所詮はアマチュアなのであまり自信満々には
言えないのですが、演出の経験を積むにつれて
世に出回っている映画レビュー(プロアマ問わず)
には一つの傾向があることがわかりました。

それはレビュー=ほぼ演技と脚本についての評価
となっているということです。

演技と脚本……
確かにどっちも大事なことです。
出来の悪い脚本がいい映画になることはありませんし
(逆はいっぱいありますけど)
役者が全員棒読み棒立ち無表情では
観るに堪えないものになることは想像に難くありません。

ですが本当に演技と脚本だけが
映像の面白さを決定づけているのでしょうか?


たとえばこんな1シーンがあるとします。

○廃ビルの一室
二人の男が対峙している。
一人は追うもので一人は追われるもの。
会話の最中、追う男の応援にきた車の走行音が近付いてくる。

追われる男、身を翻して窓を割り飛び降りる。
追う男、窓際に走り寄り下を見ると
無事に着地した男の走り去る後ろ姿を追う。

1.1940年代以前のハリウッド調保守的な演出
二人の男の全身が映るフレームサイズのミドルショットが
パンフォーカス(全体にピントが合っていること)でずっと続く。
男が飛び降りるところは走る方向にパンして追う。
着地して走り去ったことは音と追う側の男の演技で説明する。
全部1カット。

2.今のオーソドックスなやり方(多分)
二人の会話はバストアップの切り返し
のシャロウフォーカス(手前だけピントが合っている)
とロングショットのパンフォーカス
で構成する。
男が走り出すとカメラも男をトラックして追いかけ
窓の外に一緒に飛び出す。
飛び降りて着地すると追われる男のPOVに
切り替わって追う側の男の姿を見上げるカットに変わる。

さて、これを同じ脚本同じ役者で
やったとしてあなたが見たいのはどちらでしょうか?

これは極端な例ですが
演出に目を向ける人が増えてくるといいな
と思って書いてみました。

最後に私が技術的にすごいと思う
現役の日本の映画監督を何人か紹介します。

カメラワーク
西谷弘 『容疑者Xの献身』『真夏の方程式』など
西谷弘
映画ファンからは蛇蝎のごとく嫌われている
TV屋のディレクターさんで
映画の仕事もこれまた
映画ファンからは蛇蝎のごとく嫌われている
TV屋映画に限られています。

ですが、演出の腕は本物で
一般的に1作品にかける製作費が少ないTVドラマ
出身にも関わらずクレーンや空撮といった
メジャーな予算規模のある映画には欠かせない
特機の使い方が非常に上手いです。
それでいて、時折挟んでくる手持ちの使い方も巧みで
老練さとフレッシュさを併せ持っている職人肌な
監督さんだと思います。

和泉聖治 『相棒』シリーズ
和泉聖治

ピンク映画出身のもはや絶命種となってしまった
現場たたき上げのディレクターさんです。

西谷監督と同じく特機の使い方が非常に巧みです。
西谷監督との違いはより中庸と王道を行っている
ということで、アクション映画会ではやりになっている
細かいカットつなぎとハンディやステディカムショット
などはあまり使いません。

古き良き時代の職人監督の生き残りだと思います。

照明の考え方
是枝裕和 『誰も知らない』『歩いても 歩いても』など
是枝裕和
是枝監督はドキュメンタリー界出身で
極めて作家性の強い方です。

是枝作品のルックス面での特徴は
極端に陰影をつけたライティングをしていることにあります。
日本の映像界ではTVでも映画でも
ツルツルに光を回しているものが多いので
かなり異質に映ります。

昨年の『そして父になる』でも
電車内でのカットが最後には真っ暗になって
終わるという印象的なシーンがありました。

石川寛 『好きだ、』など
石川寛
可能限りライティングをしないという考え方。
TVCF界出身の石川監督は分業制が当たり前の
現代映像界において時には撮影まで自分でする
という希少な存在です。

自ら撮影も担当した『好きだ、』では
ナイトロケなどどうしても必要なところ以外は
基本的にアベイラブル(その場の自然光だけで撮ること)
でやったそうです。

それゆえ暗めのカットなどでは
光量不足なのかざらつきがありますが
ロケショットの美しさには目を見張るものがあります。
おそらく一日の中でも限られた時間帯しか
撮影しなかったのでしょう。

音の使い方
深川栄洋 『半分の月がのぼる空』『白夜行』など
深川栄洋
若手の中ではおそらく
今一番の売れっ子であると思われる
深川監督は
カメラワークも照明も編集も全てが
技術的にハイレベルな演出家さんですが
特に音の使い方に目を見張るものがあります。

2011年の『洋菓子店コアンドル』では
クリームを混ぜる音や、パイ生地をかじる音など
粒のそろった音を小刻みにそろえて
良いリズムを刻んでいました。

音の使い方については照明で例に挙げた
是枝監督も巧みで
『歩いても歩いても』での冒頭の料理描写のモンタージュカットや
ほぼ家の中だけで進行する話の中で屋内の別室から聞こえてくる
オフの音を巧みに使い事で空間性を表現していました。
TVドラマの『ゴーイングマイホーム』でも同様の手法は健在でした。

とかなんとか色々書いてみましたが
別に脚本と演技の重要性を否定する気は毛頭ありません。
他のところにも目を向けたレビューがもっと読みたいな
とか思って書いてみました。

では今日はこんなところで。

関連エントリー
『ガール』 深川監督のすごさ
テレビドラマじゃなくてテレビ映画『ゴーイング マイ ホーム』
『そして父になる』
映画『ブルー・バレンタイン』とウルトラセブンの関係
『東京家族』東京物語との比較
セカイ系アニメの演出

コメント

毎度楽しく読ませてもらってます
素人ながら、音や演出なども、映像作品を見せるために重要な要素であるか考えさせられます

あと関係ないことですが
脱兎よりかは、蛇蝎のほうが嫌われてると思います
2014/ 02/ 07( 金) 18: 20: 03| URL| 猪口婆# -[ 編集 ]
 
あ、ほんとだw
お恥ずかしいミスでした。
ご指摘ありがとうございます、修正しました。
> 毎度楽しく読ませてもらってます
> 素人ながら、音や演出なども、映像作品を見せるために重要な要素であるか考えさせられます
>
> あと関係ないことですが
> 脱兎よりかは、蛇蝎のほうが嫌われてると思います
2014/ 02/ 07( 金) 20: 08: 46| URL| ランボー怒りのサービス残業# -[ 編集 ]
 
事例①②は脳内再生余裕でした。

窓を割って飛び出すシーンなどは、
窓に向かって助走するシーンからPOVだったり、
窓の外から、窓が割れる様子を写したりもしますよね。

そう考えるとやっぱり演出というのは重要なんですね
2014/ 02/ 20( 木) 12: 32: 41| URL| BK# -[ 編集 ]
 
ありがとうございます。
演技と脚本以外の意見がもっと出てくるといいなと思っています。

> 事例①②は脳内再生余裕でした。
>
> 窓を割って飛び出すシーンなどは、
> 窓に向かって助走するシーンからPOVだったり、
> 窓の外から、窓が割れる様子を写したりもしますよね。
>
> そう考えるとやっぱり演出というのは重要なんですね
2014/ 02/ 21( 金) 20: 43: 18| URL| ランボー怒りのサービス残業# -[ 編集 ]
 

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