『青天の霹靂』—感想・レビュー

■個人的評価 60/100
ベタだけど基本に忠実に作られた佳作

晴天の霹靂1


■あらすじ
39歳の売れないマジシャンの晴夫は、母に捨てられ、父とは絶縁状態。
ある日、父の訃報を聞いて絶望した晴夫は、気がつくと40年前の浅草にタイムスリップしていた。
そこで若き日の父・正太郎と母・悦子と出会い、
スプーン曲げのマジックで人気マジシャンになった晴夫は、父とコンビを組むことに。
やがて母の妊娠が発覚し、10カ月後に生まれてくるはずの自分を待つ晴夫は、
自身の出生の秘密と向き合うこととなる。 

■悪い意味で日本映画らしい演出

さて、あんまり悪感情がなく普通に楽しめた作品でしたが
最初にどうにも好きなれない所だけ書いておきます。

これから書く事は駄目な日本映画によくある要素なのですが

第一に説明台詞が多過ぎます。
例えば本作の主人公は人生に失望していることを
「こんな人生の無意味だ」
みたいにわざわざ台詞にしていいますが
悩んでいることは表情と動作、普段の生活の描写で十分わかります。
そこまで説明されると
「お前らここまで言ってやらないと理解できないんだろ?」
と言われているようでなんだか萎えます。

第二に音に対して無神経です。
クライマックスとモンタージュ描写で壮大な
BGMが流れますが
音のバランスが悪く全てが音楽でかき消されてしまっていました。

第三にクライマックスで思い切り泣かせにかかってくるのですが
ここが非常にくどかったです。
泣かせにかかること自体は全く悪い事ではないのですが
あまりにも引っ張られるので完全に集中力が切れてしまいました。

晴天の霹靂2

■ベタって素晴らしい

本作の筋を要約すると
「人生に失望していた男が過去にタイムスリップして両親に会い希望を取り戻す」
といった感じになります。

滅茶苦茶ベタな話ですよね?

でもベタな話というのは優れているからこそ
何度も繰り返しプロットが使われている
とも言えます。

監督された劇団ひとりさんは
これが処女作とのことですがちゃんと観客を向いて
誰でも無理せず受け入れる作品に仕立て上げました。

これは私の憶測ですが
本作のカット割はカメラマンの山田康介さんが
されていたのではないでしょうか?

素人監督は特機の使い方が全く分からない人が多いのですが
本作での移動ショットは中々巧みで、かつフィックスショットのつなぎも
位置関係がはっきりとしてフレームサイズも寄り過ぎず引きすぎず
見やすい基本に忠実なプロの技が見えました。

その一方で演出家の作家性がカッティングから見えなかったので
そうなのかなと。

晴天の霹靂3

「え、監督なのにカット割考えないの?」
と疑問をもたれる方もいるかもしれません。

確かにカット割の決定権というのはもちろん監督が持つ物ですが
映像の素養がない分野違いの方が演出する時には
こういう事はよくあることです。

そういう時に監督は何をしているのかと言ったら
演技指導をしています。
演出=演技指導という監督もこの世に存在することは確かです。

劇中には監督お得意のコント調シークエンスがありましたが
コントでもちゃんとストーリーの流れの中で違和感なく組み込まれていて
非常に好感を持ちました。

また上映時間も100分未満と
切るべきところは切るという潔さが素晴らしいです。

と、とりとめなく書きましたが
傑作とまでは行かなくても誰でも安心して楽しめる
ベタの人生讃歌としておすすめです。

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