日本のTVドラマはなぜ安っぽく見えてしまうのか?


一昨日のことですがデーブ・スペクターさんが以下のような発言をし物議を醸しています。



デーブ・スペクターさんは過去にもTV番組で以下のような発言をしていますので
日本のTVドラマのクオリティについては一家言あるようです。

ドラマ低迷、デーブが直言 「日本の俳優演技ヘタ、自覚がない!」
http://www.j-cast.com/2009/07/09045046.html?p=all

日本のドラマのクオリティをどうとらえるかは人それぞれだと思いますが
番組のクオリティに手厳しい意見を持っている方は多いようで
"日本 テレビドラマ つまらない"で検索すると
似たようなテーマのスレッドやブログ記事が大量にヒットします。

内容を見ると総じて「演技が下手」「安っぽく見える」
という意見が多いようです。
というわけで今日は何で日本のTVドラマが安っぽく見えてしまうのか
映像面とそれ以外の面から私見を書いてみます。
 

1.映像面

■撮影・カッティング


まず大きな理由として被写界深度が常に深すぎるというのがあります。
これ、TVドラマに限らず邦画にも結構よく言えることなのですが
とにかくやけに深度の深い画が多いです。
分からない方のために言い換えると画面全部にピントが合っていて
ボケてる部分が全くないということです。
(ボケ味の強さは深度の浅い深いだけで決まるのではないのですが
その辺の話をしてるとキリが無いので便宜上)

以下の画像を見るとわかると思いますが左側が深く右側が浅いです。
10_2.jpg


同じ構図、同じフレームサイズでも受ける印象が全く違うのではないでしょうか。
右側の絵がよりドラマチックに綺麗に見えるかと思います。

誤解の無いように言っておくと深度が浅い画=良いではなく
深度が浅い画ばかりで構成されていると人や物の位置関係がわかりづらくなり
とっちらかった感じになってしまうので深い画も適度に必要であるとは言っておきます。

また深度との関連としてカット割りと構図があまりにテンプレートで
工夫が無さ過ぎるというのもあります。
人物の会話は全部クロースアップの切り返しでここだけ深度が浅く
(というか定石から言ってこのような寄ったカットでわざわざ深度を深くする意味がないため)
あとは立った人物が横並びで深い深度の画面だけみたいのが多く感じます。
特に大きく引くでもないフレームサイズの中に左右がルーズで人も横並びみたいなカットは
ずっと見てるとキツイです。

日本のTVドラマで良く見る構図。(『渡る世間は鬼ばかり』より)
large.jpg

■照明がフラットすぎる

次にライティングです。
日本のドラマを見ていると場面を問わずやけに画面が明るいと思った事ないでしょうか?

それはハイキーっぽくライティングにしてるからというのもあるのでしょうが
一番の理由は画面に陰が全然ないからではないかと思います。

上に挙げた『渡る世間は鬼ばかり』を見ていただけると分かりますが
不自然なまでに全体にフラットに光が当たっておりツルッツルに見えます。
その上人が横並びになっているせいで画面に奥行きがなく舞台で書き割を前にしているみたいに
見えてしまう事が安っぽさを助長させているのではないでしょうか。

下の画像は英国BBC放送『SHERLOCK シャーロック』です。
20140225-00000007-dramanavi-1-00-view.jpg


条件が近くなるように室内のカットを持ってきましたが全然印象が違く感じられませんか?

■音がうるさい

音についての考え方は大別すると2種類になります。
・台詞だけはっきり前に出す
・他の効果音と混ぜる
TVドラマは基本的に前者の方法が多いです。
どっちが良い悪いではないですが後者の方が生々しさが出せて
それがリアリティを生む効果も期待できます。
が、別にリアリティが質の良い悪いを決定付けるものでもないので
置いておいてそれより問題なのがBGMが多すぎかつ音量バランス悪すぎ
ということです。

クドイ台詞と大袈裟な芝居の上に
それ以上にうるさいBGMがしょっちゅうかぶってくる演出は
パチンコの当り演出みたいなもので分かりやすいですが
それが安っぽさの原因になっているとも考えられます。

2.それ以外

■芝居がクドい


ドラマ批判でとかく良く見る「演技が下手」についてですが
「演技が下手」ではなく「演技が大袈裟すぎて違和感がする」
ということではないでしょうか。

舞台には舞台の演技、映像には映像の演技があります。
舞台では観客が離れているためとにかく全てを大きなアクションでする必要があります。
また舞台上では絵面を変えられないので、必然性なく人が話しながら
歩き回るという演出が定石です。

が、何故か日本では映像であるTVドラマでも同じことをしようとします。
TVドラマというのはフィクションラインが低く(低い=現実と地続き感が強い)
見られるので大袈裟な芝居で必然性もなく人が歩きまわりながら話していると
変に感じるのです。

これはどの局のドラマでも同様に見られる特徴なのですが
特にTBSと日本テレビのドラマに顕著に見られる気がします。

例えば半沢直樹の登場人物みたいに青筋立てて怒鳴りながら
常に話している人現実に見た事ありますか?
私はないです。

あと人が必然性なく歩き回るはサスペンスドラマで
刑事が取り調べしているときに、尋問しながら唐突に立ちあがって窓辺に行って外見てから
また席に戻ってくるみたいな動きを良くしますがなんか不自然じゃないですかね。

こうなっちゃうのは9割9分演出家のせいです。
演技の方向性を決めるのは俳優でなく演出家だからです。

例を挙げると日本でも有数のクドい演技が特徴の香川照之さんですが
西川美和監督の『ゆれる』では終始抑えた芝居でした。
つまりやろうと思えばできるんです。

数少ない例外として船越英一郎さんがあげられます。
『白夜行』という映画で全員抑えた芝居しているのに一人だけいつも通りでしたので
あまりに長く同じことを続けてきたため本当に抑えた芝居ができなくなってしまったのかもしれません。

ちなみに、私はいままで自主制作のオーディションを通じて3ケタ以上の
俳優を自称する方たちを見てきましたが「最初に思うようにやってください」
とお願いすると9割方舞台調の芝居をしてくれます。
日本ではそのように演技指導するのが一般的なのかもしれませんね。

最後に補足しておきますが大きなアクション=悪というわけではなく
話のスケール感が合っていれば大袈裟目も十分ありです。
日本のドラマの内容が大抵半径3メートルくらいの話にとどまってるから合わないだけで
去年の映画で『64‐ロクヨン‐』『シンゴジラ』なんて結構オーバーアクトでしたけど
どっちも話にスケール感があるので少なくとも私は違和感、感じませんでした。

■脚本が…/キャストが…

演技の次に良く聞くのがこの2つ。

脚本がつまらないには別に熱心にTVドラマウォッチしてるわけでもなく
最後まで見たドラマ自体ここ数年ほとんどないのでなんとも言えないのですが
なんか台詞回しが変と思う事は多いです。

怒っている人が「うおー、俺は怒ってるんだ!」とか
リアルに言っちゃったりするのはどうかと思いませんか?
見れば分かるよって。

あとキャスティングですね。
近年だと実写版の『地獄先生ぬ〜べ〜』で雪女の役に韓国人の知英さんが当てられた時や
『ビブリア古書堂の事件手帖』で原作キャラクターと似ても似つかない剛力彩芽さんが当てられた時とか
炎上しましたよね。
こういう芸能事務所と製作局とのいびつなパワーバランスも批判を受ける要因となっているようです。

それに比べると製作体制は置いておいてアニメの方が
キャスティングは健全かしれません。
アニメの『劇場版 PSYCHO-PASS』で神谷浩史さんが
TV版のオーディション落ちたという話をしてて驚いた記憶があります。
神谷浩史さんみたいな超売れっ子でもオーディション受けるんだって。

■でもね…

そろそろ話をまとめます。
デーブ・スペクターさんに話をもどしますと
1997年の『青い鳥』というドラマを絶賛しているんですね。
05deaddb.jpg


「もうすべての役者が(演技を)抑えていた」って言って。
私も子供のころリアルタイムで見てて大好きだったので良く覚えているのですが
これ残念ながらあんまり受けてないんですよ。
20年前当時はヒットの基準が視聴率20%越えだったのに超えれなかったんです。

さて、では現在。特に平均視聴率が明確に落ちてきてる2010年代以降で
総合視聴率が一話でも30%を超えたドラマを挙げてみましょう。
『家政婦のミタ』『ドクターX 〜外科医・大門未知子〜』『半沢直樹』『逃げるは恥だが役に立つ』
どれもデーブさんが言うような抑えた芝居とは対極にある
非常に日本らしいガラパゴス演出のドラマです。

何が言いたいのかというと大半の視聴者がそういうの求めてないんじゃないかってことです。
私はどれも全く面白いと思えなかったのですが
求められる限り同じ作りの物は作り続けられるでしょうし
それを好んで見るのは罪でもなんでもないからです。

そういうわけですからいわゆるデーブさんみたいなツウに受けるドラマっていうのは
これからも作られないんじゃないですかね。

■おまけ・個人的好みな日本のTVドラマ(2010年代以降)

『流れ星』(2010/フジテレビ)
mqdefault.jpg

『それでも、生きてゆく』(2011/フジテレビ)
それでも

『ゴーイング マイ ホーム』(2012/フジテレビ)
ゴーイング

『まほろ駅前番外地』(2013/テレビ東京)
まほろ

『Woman』(2013/日本テレビ)
20130815_mitsushimahikari_25.jpg

『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016/フジテレビ)
koi.png

『カルテット』(2017/TBS)
カルテット

この辺はみんないわゆる抑えた芝居してて個人的には好きです。
ちなみに全部視聴率はお世辞にも良いとは言えませんでした。
悲しい。私の話に少しでも同意してもらえた方はぜひ見てみてください。
今日は以上です。

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