いい質問ですねえ! 社会派映画 洋画編

今日明日は社会派映画についてです。
作品で取り扱っている事件について解説していますが
あくまで管理人の知識内での説明なので
誤っているところもあるかもしれません。

間違ってたら教えてください。

※以下、池上彰調でお送りします。
池上彰
 
『スリー・キングス』 1999(米)
スリーキングス
池上「この映画の舞台は湾岸戦争休戦協定成立直後のイラクです。
3人のアメリカ軍兵が捕虜から得た謎の地図を
フセインの隠した金塊の在り処だという事を解します。
彼らは軍の指揮下を離れ、無断でそれを強奪することを計画する
という話なんですねえ」
上原「湾岸戦争ってなんですか?」
一同「え~!?」
池上「そうですね。じゃあそもそも湾岸戦争ってなんだろう?
というところからお話しましょう。
1990年、イラクはクウェートに侵攻、
併合宣言をするという行動に出ました。
クウェートは国連加盟国なので、
国連安保理が多国籍軍にイラクへの武力制裁行使を容認し開戦しました。
これが湾岸戦争です」

湾岸戦争 1990年 - 1991年
湾岸戦争

上原「何でイラクはクウェートに攻め込んだんですか?」
池上「いい質問ですねえ!
この以前にイラクはイランと国境線線を巡って
8年間戦争を続けていました。
これをイラン・イラク戦争、あるいは第1次湾岸戦争といいます。
この当時クウェートはイラクを積極的に支援し
400億ドルの資金を提供してきました。
終戦後、イラクはクウェートへの負債の返済するために、
石油輸出国機構(OPEC)を通じて石油の減産を求めたんです」
土田「え、どうして減らすんですか?
普通儲けんだったら増やそうって思いますよね?」
池上「さすが、土田さん!いいところに気が付きましたね。
イラクの考えは逆で市場に流通する石油の量を減らすことで
価格を上げようと考えたんですね!」
観客「あ~~」
池上「しかしOPECはイラクの求めに応じず、クウェートは石油の増産を行いました。
クウェートの石油増産政策に対して、
イラクは増産中止と石油価格の値上げを訴えて拒否されます。
そのためイラクはクウェートを軍事力で威嚇するようになります。
そしてついにはこのクウェート侵攻となったわけです」
上原「最後はどうなったんですか?」
池上「この戦争の結果はですね、
物量で勝る多国籍軍の圧倒的勝利に終わりました。
多国籍軍側の死者は100人に満たなかった一方
イラク軍の死者は数万人単位と言われています。
ここでの壊滅的敗北によって、
フセイン政権は存続こそ維持できたものの、
2003年のイラク戦争ではもはや
抵抗する力もないほど打ちのめされることともなりました」

スリー・キングス 特別版 [DVD]スリー・キングス 特別版 [DVD]
(2000/10/13)
ジョージ・クルーニー

商品詳細を見る


『ノー・マンズ・ランド』 2001(波黒・斯洛文尼亜・伊・仏・英・白)

ノーマンズランド
池上「はい、次はボスニア・ヘルツェゴビナ紛争についての映画ですね。
…その前にボスニア・ヘルツェゴビナってどこにあるんだろう?
あまり馴染みがないのでご存知ない方も多いと思います。
でも皆さん気になりますよね?
ボスニア・ヘルツェゴビナは
東ヨーロッパのバルカン半島北西部に位置する国です」

ボスニア・ヘルツェゴビナ

ボスニア - コピー

土田「池上さん、それ以外に気になることがあるんですけど」
池上「はい。土田さん」
土田「タイトルの"ノー・マンズ・ランド"
ってどういうことですか?」
池上「さすが、土田さん。いいところに気が付きましたね!
"ノー・マンズ・ランド"というのは
『軍事対立の中間の、いずれの勢力によっても統治されていない領域』
の事です。
言い方を変えると、『どちらの物でもない場所』ということですね」
土田「へー。じゃあその『どちらの物でもない場所』がこの話の中心
っていうことなんですね」
池上「はい。その通りなんです。
では話をボスニア・ヘルツェゴビナに戻しましょう。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争は
ユーゴスラビアから独立した
ボスニア・ヘルツェゴビナで1992年から1995年まで続いた内戦です。
ボスニア・ヘルツェゴビナは多民族国家です。
民族構成の33%を占めるセルビア人と、17%のクロアチア人・
44%のボシュニャク人が対立し、
セルビア人側が分離を目指して4月から3年半以上に渡る戦闘となりました」

ボスニア紛争 1992年 - 1995年
ボスニア紛争

劇団ひとり「そんなに長くですか!」
池上「そうなんです。
両者は全土で覇権を争って戦闘を繰り広げた結果、
死者20万、難民・避難民200万が発生したほか、
ボシュニャク人女性に対するレイプや強制出産などが行われ、
第二次世界大戦後のヨーロッパで最悪の紛争となってしまいました。
この映画は先ほど説明しました"ノー・マンズ・ランド"
に取り残されてしまったボスニア兵と
偵察に来たセルビア兵がにらみ合いを続ける。
そういう話、なんですねえ」

ノー・マンズ・ランド [DVD]ノー・マンズ・ランド [DVD]
(2002/12/18)
ブランコ・ジュリッチ、レネ・ビトラヤツ 他

商品詳細を見る


ホテル・ルワンダ』 2004(英・伊・南非)
ホテル・ルワンダ

池上「今度はアフリカ大陸に舞台が移ります。
この『ホテル・ルワンダ』はルワンダ共和国、通称ルワンダで起きた
ツチ族とフツ族の民族対立による武力衝突「ルワンダ紛争」
を題材にした映画なんですねえ」
土田「池上さん」
池上「はい」
土田「今、ツチ族とかフツ族とか出てきましたけど…」
池上「はい。気になりますよね。
ルワンダも他民族国家でして84%を占めるフツ、
それに15%のツチと1%がトゥワで構成されています」

ルワンダ共和国

ルワンダ共和国 - コピー

上原「なんで戦争になっちゃったんですか」
池上「はい。実はもともと、ここルワンダは
ベルギーの植民地支配を受けていたんですねえ。
植民地下で少数派であるツチを
支配層とする間接的な支配体制が築かれまして、
多数派のフツとごく少数のトゥワはより差別を受けるようになりました。
ところが1962年の独立の前にツチとベルギーとの関係が悪化します。
ベルギーは国連からの関係改善の勧告を無視して、
社会革命としてフツによる体制転覆を支援したんですねえ」
劇団ひとり「それじゃ、全部ベルギーの都合の動かされてるみたいじゃないですか!」
池上「はい。その通りなんです。
そこでツチは報復を恐れて近隣諸国に脱出します。
さらに1973年に国内でクーデターが起きました。
当初は和解策をとりますが、独裁批判が強まるとツチへの反発が高まります。
そのころ隣国のウガンダではウガンダのツチ系難民がルワンダ愛国戦線 (RPF) を組織して、
ウガンダを拠点にフツ族の政権に対する反政府運動を活発化させていました。
このRPFがルワンダ北部に侵攻し、ルワンダ紛争が勃発したわけです。
この映画はフツ族の過激派がツチ族やフツ族の穏健派を
120万人以上虐殺するという状況の中で、
1200名以上を自分が働いていたホテルに匿ったホテルマン、
ポール・ルセサバギナさんの実話に基づくお話なんですねえ」

ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション [DVD]ホテル・ルワンダ プレミアム・エディション [DVD]
(2006/08/25)
ドン・チードル、ソフィー・オコネドー 他

商品詳細を見る


シリアナ』 2005(米)

シリアナ
池上「テロリストがどのようにして出来上がるか
というのを描いたのがこの『シリアナ』なんですね」
この映画はもとCIAのケースオフィサーだったロバート・ベアさんが
書いた『CIAは何をしていた?』というノンフィクション
が元となっていますが映画の内容はフィクションです」
CIAは何をしていた? (新潮文庫)CIAは何をしていた? (新潮文庫)
(2005/12)
ロバート ベア

商品詳細を見る

土田「え、ちょっと耳慣れない言葉があったんですけど
ケースオフィサーってなんですか?」
池上「さすが土田さん。いいところに気が付きましたねえ!
ケース・オフィサーというのはいわゆるスパイ活動をする人のことです。
私たちがスパイといわれて思い浮かべるのがこのケースオフィサーなんですね」
劇団ひとり「じゃあジェームズ・ボンドもケースオフィサーなんですか?」
池上「彼もそうですね。でもよく誤解されがちなんですがケースオフィサーと
スパイは別物なんですね」
土田「え、そうなんですか?」
池上「はい。敵国の情報を得るための協力者を探したりその情報を管理するのが
ケースオフィサー、自国の情報を他国に流すのがスパイ。
ですのでジェームズ・ボンドはケースオフィサーということになるんですね」
一同「へ~」
池上「劇中ではジョージ・クルーニーがCIAのケースオフィサーに扮していますが
目立たないようにするため太ってひげを生やしてとても地味な印象を持たせています。
また映画の内容が実際の中東情勢を絡めているために非常に複雑なんですねえ。
舞台となるシリアナという国は中東にある架空の国家です。
石油企業コネックスとキリーンの戦略的合併に、
コネックスが合併を有利に進めるために雇った弁護士。
中東専門のベテランCIA諜報員。
国の石油採掘権を中国系企業に移し、
新しい国家を作ろうとする知的でカリスマ性のあるナシール王子と、
その弟で王位を狙ってアメリカ政財界の大物と手を組むメシャール王子。
ナシール王子の夢の実現に協力するエネルギージャーナリストのアメリカ人、
そしてパキスタンからの出稼ぎ労働者で企業合併のあおりを受けて解雇され、
次第に過激な原理主義の思想に傾倒していく青年。
これらの中心人物の思惑と思想が複雑に絡み合って話は進行していきます。
私も2回見てやっと意味がわかりました」
えなり「全然わからないです…」
池上「そうですよね。では言い方を変えましょう。
つまりはグローバリズムというものがいかにして貧困という名の暴力を生むか。
そしてどのようにしてテロリストが生まれるのか、ということですね。
実際イスラム系テロリストを一人の人間としてしっかり描いたという点では
911以降の作品としては、非常に画期的だと思いますねえ」

シリアナ 特別版 [DVD]シリアナ 特別版 [DVD]
(2006/07/14)
ジョージ・クルーニー、マット・デイモン 他

商品詳細を見る


グアンタナモ、僕達が見た真実』 2006(英)
グアンタナモ、僕たちが見た真実
池上「グァンタナモ米軍基地はキューバのグァンタナモ湾にある
メリカ海軍の基地で
アフガニスタンやイラクで拘束された人の収容所としても
使用されています。
2003年のイラク戦争以来、収容者は増加しており、
パキスタン系イギリス人やイラク系カナダ人、
イギリス人、オーストラリア人もテロ容疑者または関係者として収容されていまして、
その方たちは収監され拷問を受けた末に無関係と判明し釈放されました」

グアンタナモ米軍基地
グアンタナモ米軍基地

土田「え、じゃあ濡れ衣だったってことですか?」
池上「その通りなんです!
この映画の主人公であるパキスタン系イギリス人青年3人
もアルカーイダのメンバーと間違われ
裁判にかけられる事もなく逮捕・長期拘留されました。
しかもこれは実話なんですね!」
劇団ひとり「でも、なんでちゃんと調べればわかることですよね?」
池上「そう思いますよね!でもそれだけアメリカ人にとって
イスラム系の人たちというのが得体の知れない恐怖の存在という
ことなんです」

グアンタナモ、僕達が見た真実 [DVD]グアンタナモ、僕達が見た真実 [DVD]
(2007/06/22)
アルファーン・ウスマーン、ファルハド・ハールーン 他

商品詳細を見る


他にはこんな作品があるんですねえ。

戦場でワルツを』 2008(以)

戦場でワルツを

「レバノン内戦」と内戦中に発生し
国際的な非難を浴びた「サブラ・シャティーラ虐殺事件」
を描いた映画なんですねえ。
イスラエル側が自らの行いを反省する
というのは大変画期的だと思うんですねえ。

戦場でワルツを 完全版 [DVD]戦場でワルツを 完全版 [DVD]
(2010/12/22)
不明

商品詳細を見る



『フィラデルフィア』 1993(米)

フィラデルフィア
ゲイとHIVに対する偏見と戦う
法廷ドラマなんですねえ。

フィラデルフィア (1枚組) [DVD]フィラデルフィア (1枚組) [DVD]
(2011/01/26)
トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン 他

商品詳細を見る


『グッドナイト&グッドラック』 2005(米)
グッドナイト&グッドラック
「赤狩り」の猛威が吹き荒れる冷戦下の1950年代のアメリカを舞台に、
ニュースキャスター、エドワード・R・マローと番組スタッフが、
「マッカーシズム」に立ち向かう姿を描いた実録映画なんですねえ。
アメリカ人の共産党アレルギーが良くわかります。
ジャーナリストであるならば、この作品の
エドワード・マローのようでありたいですねえ。

グッドナイト&グッドラック 通常版 [DVD]グッドナイト&グッドラック 通常版 [DVD]
(2006/11/22)
ジョージ・クルーニー、デヴィッド・ストラザーン 他

商品詳細を見る



善き人のためのソナタ』 2006(独)

よき人のためのソナタ
旧東ドイツのシュタージ(秘密警察)のエージェントを主人公に
監視社会の実態を描いた作品ですねえ。

善き人のためのソナタ [Blu-ray]善き人のためのソナタ [Blu-ray]
(2010/08/25)
セバスチャン・コッホ、マルティナ・ゲデック 他

商品詳細を見る


マンデラの名もなき看守』 2007(独・仏・伊・白・南非)
マンデラの名も無き看守
元南アフリカ大統領でアパルトヘイトと戦った
ネルソン・マンデラの伝記映画なんですねえ。
人種隔離政策下での南アフリカの実態が
よくわかる映画なんですねえ。

マンデラの名もなき看守 [DVD]マンデラの名もなき看守 [DVD]
(2009/04/24)
ジョセフ・ファインズ、デニス・ヘイスバート 他

商品詳細を見る


関連エントリー
名サントラ集 「クラシック編」 ~クラシックサントラ12選~
ホロコースト映画

コメント

コメントの投稿

  • URL
  • コメント内容
  • password
  • 秘密
  • 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURL: http://undersiege.blog112.fc2.com/tb.php/67-ffa4e4ff
ブログパーツ